04月≪ 2017年05月 ≫06月

12345678910111213141516171819202122232425262728293031
--.--/--(--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--:--  |  スポンサー広告  |  EDIT  |  Top↑
2009.02/28(Sat)

2番ホール

 ときどき訪れるゴルフ場の2番ホール。ティーグラウンドから300ヤード、広大でゆるやかな芝生がグリーンに向けて下っている。遠くに見える小高くなったグリーンの向こうには、抜けるような青空だけが広がっている。

 ------息子の友人が死んだ。

 ことばもあまり通じない息子が4:30にやってくるのを、まぶしそうに太陽を見ながら待っていた92才の老人。穴だらけの、そこに何が書いてあったのかもすでにわからないTシャツ。92年分の太陽を吸収した細い腕。僕たちを見ると、声をかけるわけでもなく、かすかに唇をゆるめた小柄なサムライ。
  老人は貧乏だったわけではない。ゴルフ場の人によると、大きな邸宅を郊外に構え悠々自適の老境だったとのことだ。寡黙を旨とし、華美に走らず、それでもことあるごとに小さなお菓子を息子のために、しわだらけの手に握りしめていてくれていた。

 ゴルフバックを乗せたカートを押しながら、緑のなかに小さくなっていくTシャツ。移民として味わった理不尽な苦労も、彼の歩みを止めることはなかった。穴だらけのTシャツが、同じように小さいポロシャツと緑のなかへ消えていく。2人を吸い込んだ緑を見ながらタバコを吸うのが僕の常だった。

 ------2番ホールで倒れていたそうだ。心臓麻痺だったそうだ。

 老人の最後の友人は、息子だったのだろう。日本を離れたゆえに性質の純血を保った日本人と80年後の日本人。2人はほとんどことばも交わさずに黙々と9ホール。黙々と進み、そして黙々と受け継いだのだろう。

 息子は少年になった。



00:36  |  未分類  |  EDIT  |  Top↑
 | BLOGTOP | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。